競合調査

TaxSys(タクシス)

株式会社SoLabo/TAX GROUP ― 税理士専用データ基盤

調査日 2026年9月9日 / 一次情報(公式サイト・公式マニュアル・プレスリリース・IR)に限定

結論

TaxSysは会計ソフトの競合ではない。税理士事務所という流通チャネルを押さえるための入場券である。売っているのはソフトではなく、その先の30万社に融資・補助金・M&Aを流す権利。

記帳の領域では、彼らは「取り込む前の工程」しか作っていない。残高が合っているか、貸借が合っているかを確かめる機能を持たず、公式マニュアルでそれを自ら明記している。そしてロードマップは上(面談支援・CRM)へ向かうと宣言しており、この穴を埋めに来る予定がない

正面から製品で戦う相手ではない。戦う場所は「会計ソフトに入れる前に、帳簿が合っていると分かる」という、市場全体が空けている一点。

しかも彼らは仕訳の自動判別を「あえて行わない」と明言し、代表自身が「TaxSysは、まだ未完成です」と書いている。境界線は向こうが引いてくれている。

規模と成長

300事務所
TAXSYS導入(2026年8月・開始1年)
3,000事務所
2028年12月末の目標
30万社
その先に見ている事業者数
15億円
SoLabo売上(2024年10月期)

加盟店数の推移は 30社(2025年11月ごろ)→ 100社(2026年3月)→ 300事務所(2026年8月)。目標は 600(2026年末)/1,500(2027年末)/3,000(2028年末)。売上目標は2028年30億円、2033年100億円。

「税理士をハブとした事業展開を推進」「3,000社の税理士事務所を通じて約30万社の事業者へリーチ」中小機構「100億宣言」提出資料(SoLabo)

ビジネスモデル

SaaSではなくボランタリーチェーン

TaxSysは単体で買えない。TAX GROUPへの加盟が必須で、Google Workspaceは別契約。加盟は原則1年契約。

プラン事務手数料年会費月払いクレジットアカウント
STARTER150,000円180,000円20,000円3,000/月2つまで
STANDARD150,000円357,600円39,800円5,000/月無制限
STANDARD+150,000円477,600円49,800円5,000/月無制限+個別相談

すべて税抜。初年度合計 330,000〜627,600円+Google Workspace実費。クレジット追加は1,000で3,300円(税込=1件3.3円)。上限超過時の扱いは非公表。

加盟すると、顧客が販売員になる

公式の「パートナーロール」として、加盟事務所に次が依頼される場合があると明記されている。

  1. 関心のある税理士へのTAX GROUP紹介、SNS・自社サイトでの事例/セミナー発信
  2. AI-OCR・Google・クラウド会計を使った生産性モデルづくりへの協働
  3. 蓄積されたビッグデータを使った新サービスの企画・開発への協力

会計ソフト各社との関係は「連携+スポンサー」。資本関係はない

注目すべきは資金がベンダー→SoLaboの方向に流れていること。会計ソフト各社にとってSoLaboは「若手税理士が集まる場を持っている会社」であり、スポンサー料を払う対象になっている。

製品としての中身

対応証憑は11種類。領収書/発行請求書/支払請求書/現金出納帳/銀行明細/総合振込明細/クレジットカード明細/Suica・PASMO/振替伝票/医療費/ふるさと納税。

出力先は6社だが、中身の深さが違う。API連携は freee と マネーフォワード の2社だけで、弥生・TKC・JDL・MJS はCSV出力のみ。freeeアプリストアの掲載も認定バッジのない通常の連携アプリで、利用者数は700以上と表示されている。

仕訳ルールは支払先名・取引概要・金額範囲・入出金方向・証憑カテゴリを条件に、借方/貸方の科目・補助科目・税率・税区分・摘要を設定でき、優先度による制御と顧問先ごとの上書きに対応する。ここは作り込まれている。

顧問先管理・接触頻度・契約金額・日報・タスク・原価管理・届出書管理・決算申告・年末調整・各種予定納税・決算対策判定・消費税判定まで、事務所のOSとして必要なものはほぼ揃っている。

以下はすべてTaxSys自身の公式マニュアルの記載である。憶測ではない。

1. 残高照合も貸借一致の確認もしない

突合チェックは「残高照合や貸借一致の確認ではなく、個別取引の対応関係を確認する機能TaxSysヘルプページ/突合チェック

やっているのは、領収書と銀行・カード・現金出納帳の明細を、日付差と金額差で候補に出して1件ずつ人が確認すること。

ただし訂正が要る。別の画面に行単位のアラートが4種類あり、そのうち1つが「残高計算が一致しません」(銀行明細で、残高欄が計算結果と一致しない)。通帳の中で残高が繋がるかは、TaxSysも見ている。残る4つのアラートは「会計期間外です」「インボイス番号は無効です」「取り込み対象外になります(連携に必要な項目が不足)」。
依然として無いのは、伝票ごとの貸借一致の検算と、帳簿としての残高(試算表・元帳)である。

2. 試算表・元帳の画面が存在しない

TaxSysが言う「会計ツール」とは弥生・freee・MF・TKC・JDL・MJSという外部ソフトの名前であって、自前の帳簿機能ではない。マニュアル全40章のどこにも試算表・元帳のページがない。行ごとの検算はするが、集計した帳簿として合っているかは見られない。

3. 重複チェックの削除が取り消せない

重複と判定した取引を削除でき、公式に「元に戻せません」と明記されている。さらに「確認済み」の印は別のユーザーや別のブラウザで再実行すると復活する(状態が保存されていない)。

4. AIクレカ売上仕訳に履歴が残らない

カード売上明細から売上・手数料を分けて仕訳を自動生成する機能だが、公式に「生成した仕訳の利用履歴は保存されない」と記載。後から根拠を追えない。

5. 入れても定着しないことを、自ら商品化している

2026年5月に「freee×TaxSys活用定着支援」の実証プロジェクトを開始。理由として挙げられているのは「入力ルール・確認フローの非標準化」「業務の属人化」「スタッフ教育の不整備」。ツールだけでは生産性が上がらないことを、彼ら自身が前提にしている。

評判の実態

記事にはないが、Xには実名の税理士の声がある

Web検索で出てくる「導入事例」「評判」は、発信元をたどるとほぼ全部がSoLabo発の宣伝物だった。PR TIMESとその転載、公式サイトの事例、代表のnote、テレ東プラス(外部PR枠)、税理士.ch(末尾に「データ提供:PR TIMES」表記・記者名なし)、業界紙のタイアップ。note・個人ブログ・掲示板・求人票・YouTubeの第三者レビューは、いずれも0件。

ただしXには実名の税理士・会計士の声がまとまって存在する。以下はそこから拾ったもので、公式事例には出てこない。

一番価値のある1件:1か月使った定量レビュー

「TaxSysを1か月まるまる使ってみた結果発表。AI-OCRで削減できた時間は、約19時間でした。所長である私が入力していたと考えると、かなり大きな削減です。一方で、パートさんや外注さんに入力してもらっていたケースと比較すると、金額面では『TaxSysが少し優勢かな?』くらいかもしれません。(中略)一番大きいのはスピード。資料を投げて、飲み物を取りに行って戻ってきたら、もう終わっている感覚」市川秀税理士(2026年6月1日・5,821表示)

外注と比べると金額面では「わずかに優勢」程度——本人がここまで書いている。公式事例のどれよりも実務的な評価。

実名で出ている不満

TKCは、TKC側がAPI連携を断っている

「あるTKC会員が、ブログで、MF、freeeと比べ、500週以上遅れていると言わしめたTKCシステム。TaxsysとのAPI連携を、Solaboを通じてお願いしたら、Taxsysの普及を、TKC会員組織を利用するので、できないと言われた。現状では、Taxsysとの連携で、MF、freeから、TKCシステムに流れてくると思うけど」会計士・税理士(2026年4月18日・1.5万表示)

同氏はこの件でTKCからマネーフォワードへの移行も進めている。TKC事務所の現実解は「TaxSys → MF → TKCへ吸い出し」という迂回運用。なお公式サイトの対応ソフト一覧にTKCは載っていない(載せているのは広告記事だけ)。

囲い込みへの警戒は、1件だけ、しかし大きく出ている

「ほんと税理士も食えなくなってるようで、まるでfreee株式会社〇〇支店に成り下がってる税理士やら、株式会社SoLabo○○支店に成り下がってる税理士やら、なんのために独立してん?っていう税理士多くなってるよね」2026年2月17日・4.2万表示・180いいね

代表本人と加盟税理士2名が反論している。ただしこの投稿はfreeeとSoLaboを並べた業界全般への批判で、TaxSysの機能への批判ではない。
一方で「これまでの他の方の集客支援のように『紹介業者』『商工会』系の話になると困るかな…と構えていました。ですが今回は、その前提を理解した上でのご提案でありがたかった」という中間の声もある。「加盟必須が嫌で見送った」という投稿は見つからなかった。

一番信用できる不満は、売っている本人が書いている

代表の田原氏が「TaxSysが解約される理由を紹介します」というnoteを公開している(2026年3月23日)。逐語で拾う。

「解約理由:『確定申告後にAIOCRの利用頻度が下がるので、いったんサービス利用を停止します』」
「② 『データ化できるのに、使っていない』という現実 … 現金取引はまだある/紙の領収書もちゃんと存在している/でも、入力は相変わらず『手入力』」
「freeeの自動登録ルール設定に初期コストがかかる/担当者がやり方を変えるのが心理的にしんどい」
「正直、今の僕らはデータを活かすパターンをまだ十分に提供できていませんでした。その結果、『AIOCRのツール』という見られ方になり、価値を感じきってもらえなかった」
「これは、説明不足でもあり、設計不足でもあり、伴走不足です」
「TaxSysは、まだ未完成です」田原広一 note(2026年3月23日)/解約率・件数の記載はない

確定申告期にまとめて使い、終わると解約される。季節商品になっているという自己認識がある。

仕訳の自動判別を「あえてやらない」と明言している

「特徴的なのは、仕訳の自動判別をあえて行わない点だ。処理ルールは顧問先ごとに異なるため、TaxSysは『事実データを正確に整える』役割に徹し、最終判断は…」税界タイムス 第109号(2026年2月1日)/有料のため冒頭のみ

これは製品の思想であって、機能不足ではない。だからこそ、帳簿の正しさの側は今後も彼らの担当領域にならない。

数字に一貫しないところがある

クレジットは「月の上限」であって、使い放題ではない

STANDARDの5,000クレジットは毎月の上限で、「1クレジットで1仕訳以上」。ゼロになるとOCR機能が止まる。超過分の価格表は料金ページになく、マニュアル側にしかない(1,000で3,300円税込)。定額で使い放題という紹介のされ方とは食い違う。

会計ソフト連携は、ごく最近できたものが多い

リリースノートから。弥生向けの仕訳データ作成は2026年3月12日、JDL・MJSは5月14日、TKCは6月11日に追加された。仕訳ルール設定も当初は弥生会計のみ(2026年4月)。医療費・ふるさと納税・現金出納帳・総合振込明細も2025年11月以降に順次追加=それ以前は非対応だった。製品としてはまだ1年目。

市場の地図

調べた結果、TaxSysはこの市場で一番大きい相手ではない。桁が違う先行者がいる。

サービス規模料金通帳→仕訳精度の公表会計ソフト
STREAMED
マネーフォワード
7,558事務所
2023年6月末・累計有料
初期0円
月11,000円+1仕訳22円
税込・顧問先無制限
あり 翌営業日
AI+人が1件ずつ目視
99.9%
条件明示(手書き含む)
18以上
TaxSys
SoLabo
300事務所
2026年8月
初期150,000円
月20,000〜49,800円
+クレジット従量
あり条件非公開6
invox受取請求書非公表 月980〜29,800円
1件50〜100円
請求書中心なし50以上
KiCHO
シスプラ
非公表 月2,000円
AI-OCR 100枚1,000円
税区分までなし20以上
SPRAI
カーム
非公表 月12,000〜20,000円
1行15円
あり 保証しないと明記18以上
AI仕訳
Saucer
非公表 年120,000円
10円/枚
科目までなし3
Ez-AiOCR非公表 月3,000円+8円/枚 データ化のみなし不明
freee AIデータ化非公表 無料
認定アドバイザー契約が必要
ルール提案までなしfreeeのみ

本当の脅威は会計ソフト本体かもしれない

3社とも、自前で人手のデータ化代行を持っている。しかも単価がほぼ揃っている。

提供元サービス精度単価事務所向けの扱い
弥生記帳代行支援サービス99.9%
2名が目視・クロスチェック
月10,000円+18円/明細PAP会員(年会費96,000円)
freeefreeeデータ化サービス99.9%
3名がトリプルチェック
月10,000円+20円/行認定アドバイザーは500行まで基本料無料
マネーフォワードSTREAMED99.9%
専任スタッフが1件ずつ目視
月11,000円+22円/仕訳(税込)会計事務所プラン・顧問先無制限

いずれも対応証憑に紙の通帳とクレジットカード明細と手書きを含む。つまり「人が目視で確認した仕訳1件の相場は20円前後」で、それを会計ソフト本体が直接売っている。

ただしこの3つの単価はそのまま比べられない。課金単位が「1仕訳」「1行・枚」「1明細」とバラバラで、各社の公式に相互換算の定義がない。実際の比較には、自分の証憑1枚あたりの平均行数を当てて試算する必要がある。

freeeの認定アドバイザーに入ると、紙通帳のデータ化が無料・使い放題になる

freeeの「AIデータ化サービス(明細AIエージェント)」は、紙の通帳・クレジットカード明細・現金出納帳の画像を読み取り、最短3分で納品。精度は99%以上(※日付・残高が省略されないレイアウトでの自社調べ)。これが認定アドバイザー制度の加入者には「従量課金なし・完全無料」「容量無制限」で提供されている。

加えて、人が3名でトリプルチェックする「freeeデータ化サービス」(99.9%・翌営業日)も、シンプルプランで月100仕訳分、プライムで月500仕訳分まで基本料金が無料。

比較初年度の費用紙通帳のデータ化
freee 認定アドバイザー
シンプルプラン
49,800円無料・使い放題+人手100仕訳/月無料
TaxSys STARTER330,000円月3,000クレジットの上限つき

約6.6倍の差。TaxSysが初期15万円+年18万円で売っているものの中心部分を、freeeは年49,800円の制度会費に含めて配っている。しかも生成AIを使った「高精度AIモード」は、freeeの認定アドバイザーとその顧問先しか使えない

freeeは他社会計ソフト形式9種(弥生・MF・勘定奉行・PCA・JDL・ミロク・TKC ほか)での仕訳CSV出力に標準対応していて、囲い込みが弱い。導入71万事業所、有料課金694,586件、クラウド会計の国内シェア56.3%(第三者調査)。

戦場ではない場所

市場が空けている場所

全社を並べて分かったのは、誰も埋めていない穴が3つあるということ。

一、帳簿として合っているかを、入れる前に確かめる仕組み

通帳の中で残高が繋がるかはTaxSysも見ている(行アラート)。空いているのはその先。

伝票ごとに借方と貸方が一致するか。出力するCSVと確認用の試算表が同じ仕訳から作られているか。集計した帳簿として合っているか。ここを謳っている会社は1社もない。

二、補助科目の自動判定

調べた全社の公式ページで、補助科目の自動判定を明記している会社はゼロ。科目・税区分までは各社が謳うが、その1段下は空白。月次で数字を読むには補助科目が要る。

三、なぜその仕訳になったのかの根拠

学習した支払先から引いたのか、ルールに当てたのか、推測なのか。この区別を出す会社がない。TaxSysに至っては、AI生成した売上仕訳の履歴すら残らない。

OCR HOME の現在地

正直に並べる。数字は今日の実測。

OCR HOMETaxSysSTREAMED
導入4社300事務所7,558事務所
開発体制1人従業員69名マネーフォワード
対応証憑4種11種8種
会計ソフト2(CSV)6(API含む)18以上
顧問先管理・税務管理なしありなし
販売チャネルなし加盟ネットワークMFの営業網
残高の全行照合ありあり
行アラート「残高計算が一致しません」
記載なし
伝票ごとの貸借検算ありなし(公式明記)記載なし
試算表(同じ仕訳から生成)ありなしなし
仕訳の根拠の記録99〜100%
領収書137/137・クレカ452/453・口座331/331
売上仕訳は履歴なし記載なし
1件あたりの単価自前・追加費用なしクレジット従量
1件何クレジットかは非公表
22円/仕訳(税込)
弥生の作り込み識別フラグ・インボイス区分
少額特例・固定資産の月割
対応対応

広さでは勝負にならない。深さでは今のところ単独。これが現在地。

どこで戦うか

やらないこと

やること

一、「入れる前に合っていると分かる」を旗にする

他社は全部、会計ソフトに入れてから気づく設計になっている。OCR HOMEは入れる前に、通帳の残高と伝票の貸借で検算できる。この一点だけを言い切る。すでに動いているものなので、明日から言える。

二、補助科目を武器にする

市場の誰も謳っていない。補助なし原則禁止という思想を持っているのは強みで、月次で数字を読ませる話に直結する。ここを機能として前に出す。

三、freeeへは仕訳のまま入れる

TaxSysのfreee連携は生の明細を流してfreee側の自動登録ルールに当てさせる方式で、固めた仕訳を入れられない。一方freeeのAPIは振替伝票として仕訳そのものを登録できる(毎分120リクエストまで)。ここは技術的に追い抜ける。

考えるべき前提

この調査で一つはっきりしたことがある。「個人1人で開発している」と公式に名乗っているサービスは、この市場に1件も存在しなかった。最小規模でも法人(Shuttle Bros.、Ezテクノロジーズ、Saucer)である。

だから「TaxSysに負けたくない」の意味を決める必要がある。自分の事務所の生産性で負けないのか、製品を外販して負けないのか。前者なら今のままで既に勝っている(向こうにない検算を持っている)。後者なら、機能ではなく販売の設計が要る ― SoLabo自身が「機能性よりも人を通じた信頼形成」で売ると公文書に書いている。

確認できなかったこと

出典