株式会社SoLabo/TAX GROUP ― 税理士専用データ基盤
TaxSysは会計ソフトの競合ではない。税理士事務所という流通チャネルを押さえるための入場券である。売っているのはソフトではなく、その先の30万社に融資・補助金・M&Aを流す権利。
記帳の領域では、彼らは「取り込む前の工程」しか作っていない。残高が合っているか、貸借が合っているかを確かめる機能を持たず、公式マニュアルでそれを自ら明記している。そしてロードマップは上(面談支援・CRM)へ向かうと宣言しており、この穴を埋めに来る予定がない。
正面から製品で戦う相手ではない。戦う場所は「会計ソフトに入れる前に、帳簿が合っていると分かる」という、市場全体が空けている一点。
しかも彼らは仕訳の自動判別を「あえて行わない」と明言し、代表自身が「TaxSysは、まだ未完成です」と書いている。境界線は向こうが引いてくれている。
加盟店数の推移は 30社(2025年11月ごろ)→ 100社(2026年3月)→ 300事務所(2026年8月)。目標は 600(2026年末)/1,500(2027年末)/3,000(2028年末)。売上目標は2028年30億円、2033年100億円。
「税理士をハブとした事業展開を推進」「3,000社の税理士事務所を通じて約30万社の事業者へリーチ」中小機構「100億宣言」提出資料(SoLabo)
TaxSysは単体で買えない。TAX GROUPへの加盟が必須で、Google Workspaceは別契約。加盟は原則1年契約。
| プラン | 事務手数料 | 年会費 | 月払い | クレジット | アカウント |
|---|---|---|---|---|---|
| STARTER | 150,000円 | 180,000円 | 20,000円 | 3,000/月 | 2つまで |
| STANDARD | 150,000円 | 357,600円 | 39,800円 | 5,000/月 | 無制限 |
| STANDARD+ | 150,000円 | 477,600円 | 49,800円 | 5,000/月 | 無制限+個別相談 |
すべて税抜。初年度合計 330,000〜627,600円+Google Workspace実費。クレジット追加は1,000で3,300円(税込=1件3.3円)。上限超過時の扱いは非公表。
公式の「パートナーロール」として、加盟事務所に次が依頼される場合があると明記されている。
注目すべきは資金がベンダー→SoLaboの方向に流れていること。会計ソフト各社にとってSoLaboは「若手税理士が集まる場を持っている会社」であり、スポンサー料を払う対象になっている。
対応証憑は11種類。領収書/発行請求書/支払請求書/現金出納帳/銀行明細/総合振込明細/クレジットカード明細/Suica・PASMO/振替伝票/医療費/ふるさと納税。
出力先は6社だが、中身の深さが違う。API連携は freee と マネーフォワード の2社だけで、弥生・TKC・JDL・MJS はCSV出力のみ。freeeアプリストアの掲載も認定バッジのない通常の連携アプリで、利用者数は700以上と表示されている。
仕訳ルールは支払先名・取引概要・金額範囲・入出金方向・証憑カテゴリを条件に、借方/貸方の科目・補助科目・税率・税区分・摘要を設定でき、優先度による制御と顧問先ごとの上書きに対応する。ここは作り込まれている。
顧問先管理・接触頻度・契約金額・日報・タスク・原価管理・届出書管理・決算申告・年末調整・各種予定納税・決算対策判定・消費税判定まで、事務所のOSとして必要なものはほぼ揃っている。
以下はすべてTaxSys自身の公式マニュアルの記載である。憶測ではない。
突合チェックは「残高照合や貸借一致の確認ではなく、個別取引の対応関係を確認する機能」TaxSysヘルプページ/突合チェック
やっているのは、領収書と銀行・カード・現金出納帳の明細を、日付差と金額差で候補に出して1件ずつ人が確認すること。
ただし訂正が要る。別の画面に行単位のアラートが4種類あり、そのうち1つが「残高計算が一致しません」(銀行明細で、残高欄が計算結果と一致しない)。通帳の中で残高が繋がるかは、TaxSysも見ている。残る4つのアラートは「会計期間外です」「インボイス番号は無効です」「取り込み対象外になります(連携に必要な項目が不足)」。
依然として無いのは、伝票ごとの貸借一致の検算と、帳簿としての残高(試算表・元帳)である。
TaxSysが言う「会計ツール」とは弥生・freee・MF・TKC・JDL・MJSという外部ソフトの名前であって、自前の帳簿機能ではない。マニュアル全40章のどこにも試算表・元帳のページがない。行ごとの検算はするが、集計した帳簿として合っているかは見られない。
重複と判定した取引を削除でき、公式に「元に戻せません」と明記されている。さらに「確認済み」の印は別のユーザーや別のブラウザで再実行すると復活する(状態が保存されていない)。
カード売上明細から売上・手数料を分けて仕訳を自動生成する機能だが、公式に「生成した仕訳の利用履歴は保存されない」と記載。後から根拠を追えない。
2026年5月に「freee×TaxSys活用定着支援」の実証プロジェクトを開始。理由として挙げられているのは「入力ルール・確認フローの非標準化」「業務の属人化」「スタッフ教育の不整備」。ツールだけでは生産性が上がらないことを、彼ら自身が前提にしている。
Web検索で出てくる「導入事例」「評判」は、発信元をたどるとほぼ全部がSoLabo発の宣伝物だった。PR TIMESとその転載、公式サイトの事例、代表のnote、テレ東プラス(外部PR枠)、税理士.ch(末尾に「データ提供:PR TIMES」表記・記者名なし)、業界紙のタイアップ。note・個人ブログ・掲示板・求人票・YouTubeの第三者レビューは、いずれも0件。
ただしXには実名の税理士・会計士の声がまとまって存在する。以下はそこから拾ったもので、公式事例には出てこない。
「TaxSysを1か月まるまる使ってみた結果発表。AI-OCRで削減できた時間は、約19時間でした。所長である私が入力していたと考えると、かなり大きな削減です。一方で、パートさんや外注さんに入力してもらっていたケースと比較すると、金額面では『TaxSysが少し優勢かな?』くらいかもしれません。(中略)一番大きいのはスピード。資料を投げて、飲み物を取りに行って戻ってきたら、もう終わっている感覚」市川秀税理士(2026年6月1日・5,821表示)
外注と比べると金額面では「わずかに優勢」程度——本人がここまで書いている。公式事例のどれよりも実務的な評価。
「あるTKC会員が、ブログで、MF、freeeと比べ、500週以上遅れていると言わしめたTKCシステム。TaxsysとのAPI連携を、Solaboを通じてお願いしたら、Taxsysの普及を、TKC会員組織を利用するので、できないと言われた。現状では、Taxsysとの連携で、MF、freeから、TKCシステムに流れてくると思うけど」会計士・税理士(2026年4月18日・1.5万表示)
同氏はこの件でTKCからマネーフォワードへの移行も進めている。TKC事務所の現実解は「TaxSys → MF → TKCへ吸い出し」という迂回運用。なお公式サイトの対応ソフト一覧にTKCは載っていない(載せているのは広告記事だけ)。
「ほんと税理士も食えなくなってるようで、まるでfreee株式会社〇〇支店に成り下がってる税理士やら、株式会社SoLabo○○支店に成り下がってる税理士やら、なんのために独立してん?っていう税理士多くなってるよね」2026年2月17日・4.2万表示・180いいね
代表本人と加盟税理士2名が反論している。ただしこの投稿はfreeeとSoLaboを並べた業界全般への批判で、TaxSysの機能への批判ではない。
一方で「これまでの他の方の集客支援のように『紹介業者』『商工会』系の話になると困るかな…と構えていました。ですが今回は、その前提を理解した上でのご提案でありがたかった」という中間の声もある。「加盟必須が嫌で見送った」という投稿は見つからなかった。
代表の田原氏が「TaxSysが解約される理由を紹介します」というnoteを公開している(2026年3月23日)。逐語で拾う。
「解約理由:『確定申告後にAIOCRの利用頻度が下がるので、いったんサービス利用を停止します』」
「② 『データ化できるのに、使っていない』という現実 … 現金取引はまだある/紙の領収書もちゃんと存在している/でも、入力は相変わらず『手入力』」
「freeeの自動登録ルール設定に初期コストがかかる/担当者がやり方を変えるのが心理的にしんどい」
「正直、今の僕らはデータを活かすパターンをまだ十分に提供できていませんでした。その結果、『AIOCRのツール』という見られ方になり、価値を感じきってもらえなかった」
「これは、説明不足でもあり、設計不足でもあり、伴走不足です」
「TaxSysは、まだ未完成です」田原広一 note(2026年3月23日)/解約率・件数の記載はない
確定申告期にまとめて使い、終わると解約される。季節商品になっているという自己認識がある。
「特徴的なのは、仕訳の自動判別をあえて行わない点だ。処理ルールは顧問先ごとに異なるため、TaxSysは『事実データを正確に整える』役割に徹し、最終判断は…」税界タイムス 第109号(2026年2月1日)/有料のため冒頭のみ
これは製品の思想であって、機能不足ではない。だからこそ、帳簿の正しさの側は今後も彼らの担当領域にならない。
STANDARDの5,000クレジットは毎月の上限で、「1クレジットで1仕訳以上」。ゼロになるとOCR機能が止まる。超過分の価格表は料金ページになく、マニュアル側にしかない(1,000で3,300円税込)。定額で使い放題という紹介のされ方とは食い違う。
リリースノートから。弥生向けの仕訳データ作成は2026年3月12日、JDL・MJSは5月14日、TKCは6月11日に追加された。仕訳ルール設定も当初は弥生会計のみ(2026年4月)。医療費・ふるさと納税・現金出納帳・総合振込明細も2025年11月以降に順次追加=それ以前は非対応だった。製品としてはまだ1年目。
調べた結果、TaxSysはこの市場で一番大きい相手ではない。桁が違う先行者がいる。
| サービス | 規模 | 料金 | 通帳→仕訳 | 精度の公表 | 会計ソフト |
|---|---|---|---|---|---|
| STREAMED マネーフォワード |
7,558事務所 2023年6月末・累計有料 |
初期0円 月11,000円+1仕訳22円 税込・顧問先無制限 |
あり 翌営業日 AI+人が1件ずつ目視 |
99.9% 条件明示(手書き含む) | 18以上 |
| TaxSys SoLabo |
300事務所 2026年8月 |
初期150,000円 月20,000〜49,800円 +クレジット従量 |
あり | 条件非公開 | 6 |
| invox受取請求書 | 非公表 | 月980〜29,800円 +1件50〜100円 |
請求書中心 | なし | 50以上 |
| KiCHO シスプラ | 非公表 | 月2,000円 AI-OCR 100枚1,000円 |
税区分まで | なし | 20以上 |
| SPRAI カーム | 非公表 | 月12,000〜20,000円 +1行15円 |
あり | 保証しないと明記 | 18以上 |
| AI仕訳 Saucer | 非公表 | 年120,000円 +10円/枚 |
科目まで | なし | 3 |
| Ez-AiOCR | 非公表 | 月3,000円+8円/枚 | データ化のみ | なし | 不明 |
| freee AIデータ化 | 非公表 | 無料 認定アドバイザー契約が必要 |
ルール提案まで | なし | freeeのみ |
3社とも、自前で人手のデータ化代行を持っている。しかも単価がほぼ揃っている。
| 提供元 | サービス | 精度 | 単価 | 事務所向けの扱い |
|---|---|---|---|---|
| 弥生 | 記帳代行支援サービス | 99.9% 2名が目視・クロスチェック | 月10,000円+18円/明細 | PAP会員(年会費96,000円) |
| freee | freeeデータ化サービス | 99.9% 3名がトリプルチェック | 月10,000円+20円/行 | 認定アドバイザーは500行まで基本料無料 |
| マネーフォワード | STREAMED | 99.9% 専任スタッフが1件ずつ目視 | 月11,000円+22円/仕訳(税込) | 会計事務所プラン・顧問先無制限 |
いずれも対応証憑に紙の通帳とクレジットカード明細と手書きを含む。つまり「人が目視で確認した仕訳1件の相場は20円前後」で、それを会計ソフト本体が直接売っている。
ただしこの3つの単価はそのまま比べられない。課金単位が「1仕訳」「1行・枚」「1明細」とバラバラで、各社の公式に相互換算の定義がない。実際の比較には、自分の証憑1枚あたりの平均行数を当てて試算する必要がある。
freeeの「AIデータ化サービス(明細AIエージェント)」は、紙の通帳・クレジットカード明細・現金出納帳の画像を読み取り、最短3分で納品。精度は99%以上(※日付・残高が省略されないレイアウトでの自社調べ)。これが認定アドバイザー制度の加入者には「従量課金なし・完全無料」「容量無制限」で提供されている。
加えて、人が3名でトリプルチェックする「freeeデータ化サービス」(99.9%・翌営業日)も、シンプルプランで月100仕訳分、プライムで月500仕訳分まで基本料金が無料。
| 比較 | 初年度の費用 | 紙通帳のデータ化 |
|---|---|---|
| freee 認定アドバイザー シンプルプラン | 49,800円 | 無料・使い放題+人手100仕訳/月無料 |
| TaxSys STARTER | 330,000円 | 月3,000クレジットの上限つき |
約6.6倍の差。TaxSysが初期15万円+年18万円で売っているものの中心部分を、freeeは年49,800円の制度会費に含めて配っている。しかも生成AIを使った「高精度AIモード」は、freeeの認定アドバイザーとその顧問先しか使えない。
freeeは他社会計ソフト形式9種(弥生・MF・勘定奉行・PCA・JDL・ミロク・TKC ほか)での仕訳CSV出力に標準対応していて、囲い込みが弱い。導入71万事業所、有料課金694,586件、クラウド会計の国内シェア56.3%(第三者調査)。
全社を並べて分かったのは、誰も埋めていない穴が3つあるということ。
通帳の中で残高が繋がるかはTaxSysも見ている(行アラート)。空いているのはその先。
伝票ごとに借方と貸方が一致するか。出力するCSVと確認用の試算表が同じ仕訳から作られているか。集計した帳簿として合っているか。ここを謳っている会社は1社もない。
調べた全社の公式ページで、補助科目の自動判定を明記している会社はゼロ。科目・税区分までは各社が謳うが、その1段下は空白。月次で数字を読むには補助科目が要る。
学習した支払先から引いたのか、ルールに当てたのか、推測なのか。この区別を出す会社がない。TaxSysに至っては、AI生成した売上仕訳の履歴すら残らない。
正直に並べる。数字は今日の実測。
| OCR HOME | TaxSys | STREAMED | |
|---|---|---|---|
| 導入 | 4社 | 300事務所 | 7,558事務所 |
| 開発体制 | 1人 | 従業員69名 | マネーフォワード |
| 対応証憑 | 4種 | 11種 | 8種 |
| 会計ソフト | 2(CSV) | 6(API含む) | 18以上 |
| 顧問先管理・税務管理 | なし | あり | なし |
| 販売チャネル | なし | 加盟ネットワーク | MFの営業網 |
| 残高の全行照合 | あり | あり 行アラート「残高計算が一致しません」 | 記載なし |
| 伝票ごとの貸借検算 | あり | なし(公式明記) | 記載なし |
| 試算表(同じ仕訳から生成) | あり | なし | なし |
| 仕訳の根拠の記録 | 99〜100% 領収書137/137・クレカ452/453・口座331/331 | 売上仕訳は履歴なし | 記載なし |
| 1件あたりの単価 | 自前・追加費用なし | クレジット従量 1件何クレジットかは非公表 | 22円/仕訳(税込) |
| 弥生の作り込み | 識別フラグ・インボイス区分 少額特例・固定資産の月割 | 対応 | 対応 |
広さでは勝負にならない。深さでは今のところ単独。これが現在地。
他社は全部、会計ソフトに入れてから気づく設計になっている。OCR HOMEは入れる前に、通帳の残高と伝票の貸借で検算できる。この一点だけを言い切る。すでに動いているものなので、明日から言える。
市場の誰も謳っていない。補助なし原則禁止という思想を持っているのは強みで、月次で数字を読ませる話に直結する。ここを機能として前に出す。
TaxSysのfreee連携は生の明細を流してfreee側の自動登録ルールに当てさせる方式で、固めた仕訳を入れられない。一方freeeのAPIは振替伝票として仕訳そのものを登録できる(毎分120リクエストまで)。ここは技術的に追い抜ける。
この調査で一つはっきりしたことがある。「個人1人で開発している」と公式に名乗っているサービスは、この市場に1件も存在しなかった。最小規模でも法人(Shuttle Bros.、Ezテクノロジーズ、Saucer)である。
だから「TaxSysに負けたくない」の意味を決める必要がある。自分の事務所の生産性で負けないのか、製品を外販して負けないのか。前者なら今のままで既に勝っている(向こうにない検算を持っている)。後者なら、機能ではなく販売の設計が要る ― SoLabo自身が「機能性よりも人を通じた信頼形成」で売ると公文書に書いている。